突然に走り出した楓子は、あっと言う間に視界から消えた。
公園通りにはJ.D.Southerの新作を宣伝するPublicity Posterがいたるところに貼られ、Speakerから「You’re Only Lonly」が繰り返し流れている。
「もう少しVolumeを絞ってほしいなぁ。A.O.Rなんてどうせ業界がLP盤の売上げを伸ばすための戦略に過ぎないし、あと数年もすればRecord盤なんてなくなってしまうのだから…。」
正章はいまの音楽業界に対して不満を持っていた。
公園通りのMcDonaldではBEAMSのTrainerをきた大学生がPonytailの店員をからかっている。
そんな街の喧騒の中、ようやく人混みのなかに西武Departmentの間を井の頭通り方面に消える楓子の姿が見えた。
やれやれと思いながらも、正章はそんな気まぐれな楓子が愛おしかった。
そして井の頭通りへ
彼女はSoup屋の手前を右に曲がり、Spain坂に向かっていた。
彼女を追いかけて井の頭通りを東急Hands方面に向かうと、春にOpenしたばかりの渋谷109が左に見えた。
正章はこのとき、楓子の目的がSpain坂にあるCafe「RISE」であることを確信し、急ぎ足をとめた。